住宅ローン 借り方と繰上返済の新常識 〜住宅ローンの常識を疑おう〜 本文へジャンプ
元金均等返済よりも、元利均等返済 住宅ローンの常識を疑おう:2


 住宅ローンは、元利均等返済の方が当初の負担が小さいため、多くの人が元利均等返済で借入をしています。
 しかし、元利均等返済と元金均等返済を比べると、元金均等返済の方が総返済額は少なくなります。このため、それを知っている人は元金均等返済を選ぶことがあります。
 では、元金均等返済で借りる方が良いのでしょうか?

 私の答えは、「ノー」です。元金均等返済で返せる余裕があっても、元利均等返済で借りた方が良いと考えています。
 元利均等返済の方が、当初に毎月返済しなければならない額を減らせるので、何かあったとき(収入が減ったときや支出が増えたとき)のリスクを少なくすることができるからです。

 「でも、元金均等返済の方が得じゃないか」と思われる方も多いでしょう。
 しかし、ここでも「繰上返済」を継続的に行うという方法を使います。
 毎月繰上返済をして、毎月の返済額を元金均等返済と同じにすることで、「元金均等返済で借りたときと総返済額を同じに出来る」のです。また、元金均等返済で支払える余裕があるなら、その当初返済額と同じ額まで繰上返済を毎月することで、元金均等返済で繰上返済しないよりも、総返済額を減らすことさえ出来ます。繰上返済は、まとまった額で、という概念を捨てましょう。少額でも良いのです。

 この方法のメリットは何か。
 それは、この方法の場合、支払いが苦しいときは繰上返済を一時的にやめることで、毎月の返済額を大幅に減らすことが出来るのです。

 今の収入が確実に続くのなら、リスクなど考える必要は無いのかもしれません。
 しかし、あなたは、重い病気になって、しばらく会社を休まなければならないかもしれません。不景気で収入が落ち込むかもしれません。リストラに遭ってしまうかもしれません。収入が減らないまでも、お子様の成長に伴い、支出が一時的に大きく増えるかもしれません。

 このようなとき、もし、始めから短い期間で組んでしまったら、返済額を減らすことは出来ません。
 ですが、長く借りて月々の約定返済額(返済しなければならない額)を減らしておけば、繰上返済は義務ではありませんから、いつでも止めることができ、苦しい時は約定返済額だけを返済すればよいのです。

 しかも、繰上返済を返済額軽減型で行うことで、この「毎月返済しなければならない額」をさらに小さくすることが出来ます。(これについては後述します。)

具体例(2000万円、3.0%全期間固定金利、35年返済)
元金均等返済 元利均等返済 元利均等返済
+繰上返済
初回返済額 97,619円 76,970円 97,619円
(元金均等返済と同じ)
 うち元金
 (返済義務あり)
47,619円 26,970円 26,970円
 うち利息
 (返済義務あり)
50,000円
(元利均等返済と同じ)
50,000円
(元金均等返済と同じ)
50,000円
(元金均等返済と同じ)
 うち繰上返済
 (元金に充当。義務なし)
なし なし 20,649円
最終回返済額 47,738円 76,970円
(初回と同じ)
97,619円
(初回と同じ)
 うち元金
 (返済義務あり)
47,619円
(初回と同じ)
76,778円 915円
 うち利息
 (返済義務あり)
119円 192円 364円
 うち繰上返済
 (元金に充当。義務なし)
なし なし 96,340円
総返済額 3,053万円 3,233万円 2,806万円
完済期間 35年 35年 24年
※繰上返済は、返済額軽減型を毎月繰り返した場合

(2000万円、3.0%全期間固定金利、35年返済、元利均等返済、繰上返済なし)

毎月の約定返済額:76,970円、総返済額:3,233万円

(2000万円、3.0%全期間固定金利、35年返済、元金均等返済、繰上返済なし)

毎月の約定返済額:97,619円→47,738円、総返済額:3,053万円
総返済額は小さくなるが、当初の約定返済額は大きくなってしまうので、リスクが大きい。

(2000万円、3.0%全期間固定金利、35年返済、元利均等返済、繰上返済あり(元金均等返済と同額に))

毎月の約定返済額:76,970円→(当初)、総返済額:3,233万円
繰上返済を含めた返済額は、元金均等返済の当初の返済額と同じだが、毎月の約定返済額は元利均等返済と同額の76,970円から徐々に減っていき、リスク回避の効果が大きい。
繰上返済を止めると、その時点での約定返済額で35年目まで返済することになる。


 もちろん、「繰上返済を毎月するのは面倒だ」と感じる方もいるでしょう。また、実際に面倒な金融機関もあるでしょう。また、少額の繰上返済が出来ない金融機関もあるでしょう。
 その場合は、年に1回程度の繰上返済でも大差ありません。年間の返済額が、短く借りたときと同じ額になるように繰上返済をすればよいのです。